読書

鎌倉を舞台にした手紙と家族の歴史の物語

キラキラ共和国 

小川糸著 ツバキ文具店の続編。
ツバキ文具店の読者アンケートで続編が読みたいという声が多く、続編を書くことにしたと著者の小川糸さんがおっしゃっていました。ツバキ文具店は2017年本屋大賞第4位の作品です。

本が好き!でも「キラキラ共和国」のレビューを書きましたが、種ごとでは、もう少し詳しくレビューします。


主な登場人物

ポッポちゃん(守景鳩子 旧姓雨宮)
母親が未成年のときに未婚で出産した子である。生後間もなく母親とは生き別れ、母親の顔も知らない。祖母である先代に代書屋の後継ぎとして非常に厳しく育てられが、反発して家を出る。先代の死後、鎌倉に戻りツバキ文具店及び、代書屋(手紙代行)を引き継ぐ。

守景蜜朗
ポッポちゃんの夫。先妻は事件で亡くしている。QPちゃんの父。

QPちゃん(守景陽菜)
守景蜜朗と先妻との間の一人娘。元はポッポちゃんの文通相手で、蜜朗とポッポちゃんが付き合うきっかけを作った。素直で聡明な子。

先代(雨宮カシ子)
ツバキ文具店の先代であり、ポッポちゃんの祖母。

レディー・ババ
後ろから見るとレディー・ガガだが、前から見るとレディー・ババ。最近、鎌倉でよく見掛けられるようになった女性。

バーバラ婦人
ツバキ文具店のお隣さん。一人暮らし。高齢だがボーイフレンドも多く、活発で華のある女性。ポッポちゃんにとって一番年上の友達であり、親友。

男爵
いつも着物を着ている。体格も声も大きい男性。せっかち。最初の頃、ポッポちゃんは苦手意識が強かった。ポッポちゃんの親ぐらいの年代。ツバキ文具店の後半でパンティーと結婚した。美味しい店、美味しい料理をよく知っている。言葉は強いが、優しい心遣いができる人という印象を受けた。

パンティー(楠帆子)
男爵の妻。小学校の先生。パンを焼くことが趣味の先生が、ニックネームの由来。
明るく、たくましい1児の母。

キラキラ共和国の「キラキラ」の由来

タイトルのキラキラ共和国の由来は、「ツバキ文具店」の一文の中にあると私は解釈しています。
その文章を紹介します。
私は、「ツバキ文具店」を読む時点で、「キラキラ共和国」とシリーズだと知っていたので、「あ!」と思ったのでした。

「私がずーっとやってきた、幸せになれる秘密のおまじないなの」
バーバラ婦人がふふふと笑った。
「教えてください」
「あのね、心の中で、キラキラ、って言うの。目を閉じて、キラキラ、キラキラ、ってそれだけでいいの。そうするとね、心の暗闇にどんどん星が増えて、きれいな星空が広がるの」
「キラキラって言うだけでいいんですか?」
「そう、簡単でしょ? どこでもできるし。これをやるとね、辛いこととか、悲しいこととかも、全部きれいな星空に紛れちゃうの。ね、今すぐやってみて」

「ツバキ文具店」128Pより

文房具と手紙とぬくもりにあふれている本 本が好き!でも「ツバキ文具店」のレビューを書きましたが、こちらでは、自分の経験や感想なども含めて、もう少し詳しくレビューします。ツバキ...

「キラキラ共和国」で心惹かれたところ

私は、ポッポちゃんが新しい家族を作っていく過程にとても興味を持ちました。

「母」の愛情を知らないポッポちゃんが、母を亡くしたQPちゃんの母、前妻を亡くしたミツローさんの妻になりました。ポッポちゃんと守景親子との距離感が少しずつ変化していきます。自然に変化したのではなく、自分たちで意識して形を作っているように感じました。

お盆には3人でミツローさんのご実家を訪問してご両親やおばあちゃん、お姉さんとも会います。ミツローさんからは、前妻さんがどんな人だったのか 直接聞いたことはありませんでしたが、ご実家でのできごとから、ポッポちゃんは、ミツローさんの前妻さんのことも身近に感じるようになります。

結婚するまでは、ポッポちゃんにとって家族は先代だけ。それ以外に身内と思える人は、先代の双子の妹だけでした。家族の人数が少なかったポッポちゃんがミツローさんと結婚することによって、『家族』を感じることが増えていく、その描写に心を惹かれました。

誰からの手紙をもらいたいですか?

キラキラ共和国を読んで、私は誰から手紙をもらいたいのだろう?と、ふと考えました。
手紙をもらいたい相手が、実際に書いてくれる相手かどうかは別として、想像するだけで、心がポッと明るくなります。

そんなことを考えていると、手紙をもらいたい相手というのは、自分にとって大切な人、心の拠り所となる人だなと気がつきました。とりとめのない時間ですが、心の拠り所となる人のことをじっくりと考えてみるということは、自分自身を知ることに繋がっていました。

行ってみたくなる街 鎌倉

幻冬舎文庫

「ツバキ文具店の鎌倉案内」も素敵です。こちらは、「ツバキ文具店」「キラキラ共和国」にゆかりのお寺、お店などの鎌倉ガイドブックで、柔らかで素敵なイラストが多数掲載されています。

小説のイラストを担当されたしゅんしゅんさんが描いており、見ているだけで、気持ちがほっこりします。


「ツバキ文具店」「キラキラ共和国」とも季節感たっぷりの文章で鎌倉の風景がとても美しく描かれています。また、どれも食べ物の描写がリアルで美味しそうです。このシリーズに出てくるお店は実在のお店なので、「ツバキ文具店の鎌倉案内」を持って鎌倉を歩き、筆者の小川糸さんや登場人物が味わったものを私も食べてみたいと思います。

「キラキラ共和国」 本のデータ

  • 著者:小川糸
  • 出版社 : 幻冬舎 (2017/10/25)
  • 発売日 : 2017/10/25
  • 単行本 : 251ページ