「繊細さん」という言葉
『「気がつきすぎて疲れる」が驚くほどなくなる 「繊細さん」の本』だが、「繊細さん」という言葉に引っ掛かりを感じていた。引っ掛かって頭に残るが、なぜか自分が読む本ではないと距離を感じてしまう。「気がつきすぎて疲れる」とタイトルに書かれてるけど多分、私はそんなに気がつくほうじゃない。私向けの本ではない気がする。しかし、書店に行くといつも目に入ってくる。
今ほ50万部を超える書籍だが、思い起こすと発売当初からずっと気になっていた。
どの書店に行っても、「繊細さん」の本が目につく。店頭の目立つ場所に置かれているというだけでなく、本の力で目につく。そんな期間が1年近く続いていた。「向き・不向き」とか「私がそのタイプかどうか」ではなく、「本から呼ばれている」ということだと思い購入。
結果、まさに私向けの本だった。
自分が繊細かどうか、自分が判断するのがよいのかどうかもわからない。私の感覚からすると繊細かどうかは他の人が判断するものだ。しかし、この本の中に「繊細さん診断テスト」がある以上、基準に沿って自己判断してみようと思った。この診断テストの結果からは、私は繊細さんに該当するようだ。
「繊細さん」というと、どこかPopな感じがする。「繊細さん」はカウンセラーである著者がカウンセリングで出会ったHSPの方々への親しみを込めた呼び方である。最近、耳にすることが増えたHSPとは Highly Sensitive Personの頭文字で、アメリカの心理学者エレイン・アーロン博士が提唱したもの。
自分は過敏なところがある。日によって非常に過敏になるときがあるという意識はある。
言葉のイメージとして「繊細」は「可愛げ」があるけれど、「過敏」に可愛らしさはない。
この本を読んで、こういう細かなことの違いを感じてしまうこと自体、「繊細さん」なんだろうと気づいた。
繊細さんの感覚と悩み
私が当たり前に感じるこの感覚が、本当に「ない」んだ。文字通り「わからない」んだ。
第3章 人間関係をラクにする技術 親に「あなたがわからない」と言われた私の経験
その事実を受け止めるには、ずいぶん時間がかかりました。大切な相手とわかりあえない寂しさや深い悲しみがありました。
(中略)
今では、感覚への理解と愛はイコールではないのだとわかります。「理解はなくとも愛はある」という形もあり、それはそれであたたかいものだと思っています。
あなたがもし、「わかってもらえない」と悩んでいるのだとしたら、相手には、あなたの持つ感覚が「ない」、あるいは「ほとんどない」のかもしれません。
相手との違いを知り、時間をかけて少しずつ受け止めること。
それが心穏やかな関係を築くスタートになるのだと思います。
「感覚への理解はなくとも愛はある」という言葉に、私は非常に暖かいものを感じた。
私の感想だが、「私のこの感覚をどうしてわかってくれないの?」と思うことは、私の事情であり、「この感覚がない人」に想像してほしい、想像できるはずと思うことは、傲慢なわがままではないか?「どうして寄り添ってくれないの?」と思う私自身が、わからない相手、その感覚のない相手に対して寄り添っていないのではないか?と思い至った。
繊細さんもそうでない人も、相手との違いを知り、その違いを受け止めていくことは、相手を思いやり、スムーズな人間関係を作るうえで大切なことだということにこの本を読んで気づいた。
繊細さんの強み
第5章 繊細さんが自分を生かす技術の項に 繊細さんに共通する「5つの力」が書かれている。これは繊細さんの強みの部分だ。5つの力とは
- 感じる力
- 考える力
- 味わう力
- 良心の力
- 直感の力
自分が繊細さんだと思う人は、その一つ一つ、自分にとっての「考える力」は何かなど5項目をを書き出してみるワークをお勧めする。というのは、私自身が実際に書き出してみて、自分のことを肯定的にとらえることができるようになったからだ。
本の中には具体的に、5つの力がどういうものか書かれている。その中から味わう力を引用する。
・「いいもの」を受けとり、深く味わう
繊細さんに共通する「5つの力」 味わう力 214ページ
・味わったものを出力する(絵や写真や音楽などで表現する)
(中略)
世界の美しさや優しさ、人の暖かさ。「いいもの」を受けとり深く味わうことは、繊細さんの得意技。
絵、歌、音楽、カメラ、文章、俳句、ハンドメイド。
手段はさまざまですが、書いたり描いたり歌ったりと、自分の内面を表現している繊細さんも数多くいます。
繊細さんは、解像度の高いカメラのように「いいもの」をきめ細かく高精度で受けとって心の中で味わい、大事なところをぎゅっと濃縮して表現を生み出します。
やわらかい日差しをとらえた風景写真、心模様が伝わる優しい絵、感じたことを丁寧に言葉に綴ったブログ。繊細さんの表現は、見た人の心をとらえます。
これを読むだけでも、繊細さんの世界はなんて豊かに彩られているのだろうと思う。私が音楽が好きで、その音楽の中では細かなことにこだわるのも繊細さんだからかもしれない。この本では自分の弱点だと思うことも、プラスに発想を変換してくれた。
終わりに
繊細であることは悪いことばかりじゃない。この部分を読んで「繊細さん」として自覚して暮らすのもいいと、割り切って考えられるようになった。
この本には生活の中で取り入れられるエッセンス、考え方が多く書かれている。生きる勇気をもらえた本だった。