読書

文房具と手紙とぬくもりにあふれている本

本が好き!でも「ツバキ文具店」のレビューを書きましたが、こちらでは、自分の経験や感想なども含めて、もう少し詳しくレビューします。
ツバキ文具店は2017年本屋大賞第4位の作品。ちなみに2017年本屋大賞受賞作は、恩田陸著『蜜蜂と遠雷』。


主な登場人物

ポッポちゃん(雨宮鳩子)
鎌倉でツバキ文具店を営みながら、代書屋(手紙代行)を行う。子どもの頃は先代と二人暮らし。厳しかった先代には、複雑な感情を抱いている。反発し海外で生活後、帰国。先代が亡くなり、家業を継ぐ。

先代(雨宮カシ子)
ツバキ文具店の先代であり、ポッポちゃんの祖母。ポッポちゃんを思い、厳しく育ててきたが、晩年はポッポちゃんとの関係が悪化する。地域の人から非常に信頼されていた。

バーバラ婦人
ツバキ文具店のお隣さん。一人暮らし。高齢だがボーイフレンドも多く、活発で華のある女性。ポッポちゃんにとって一番年上の友達であり、親友。

男爵
いつも着物を着ている。体格も声も大きい男性。せっかち。最初の頃、ポッポちゃんは苦手意識が強かった。ポッポちゃんの親ぐらいの年代。

パンティー(楠帆子)
小学校の先生。パンを焼くことが趣味の先生が、ニックネームの由来。

QPちゃん(守景陽菜)
ポッポちゃんと文通をしている5歳の女の子。ポッポちゃんの一番若い友達。

守景蜜朗
鎌倉でカフェを営んでいる。QPちゃんの父。

文房具、手紙グッズについて

手紙を書く時の便箋、封筒、ペンなどを選ぶのはとても楽しい時間です。相手のことを考えてワクワクします。手紙のグッズ選びはときめきます。といっても、これは私のような素人の考えで、代書屋、プロの仕事となると、なんとなく選んだり、ときめきで選ぶのではなく、状況に応じて選ばれているのです。

私がこの本の中で、1番気になった筆記用具がガラスペンです。

ペン先にインクを染み込ませて書きます。ペン先には8本の細い溝があり、インクをペン先に浸すとインクを吸い上げる仕組み。ガラスペンは筆圧がいらずに、書くときにカリカリした音がするそうです。しかもポッポちゃんの持っているガラスペンは、薄紅色の華奢なもの。頭に浮かぶ映像はひたすら美しい。

さて、ここから私の話。
文具店に行くと沢山の美しいインクの瓶が並んでいます。それは視界に入ってくるのですが、見ないようにしています。瓶の形やラベルの美しさ、インクの色や、名前。視界の隅に入っているだけなのに、心に引っかかります。

yu62ballenaによるPixabayからの画像

私はコレクター気質。本、マスキングテープ、以前にはCDやポケモンgoでのポケモンも気がついたら増えていました。私には集めようという意識は全くないのに増えていくのです。

ペンで書かない(書く機会がない)のに次々、欲しくなる予感。しかも、このインク沼は幸せに満ちていそうなのです。

ガラスペンを買って、いつ何を書くか決めて、書くことをルーチン化すれば書く。
そもそも手書きする、文字を書くことは、どちらかといえば好きなほうじゃない?

と自分の内なる声が言っています。悪魔のささやき。悪魔には退散してもらったほうがいいのだけれど、どうも近くにいる気配がします。

「ツバキ文具店」の手紙

本の中では実際に手書きの手紙が出てきます。代書屋としての手紙は、依頼主の性格や気持ちを乗り移らせて書くもの。字体、文字の流れは見事で、文字で演じているのだと感じました。一方、先代やポッポちゃんのプライベートの手紙は、その時の感情、その人本来の性格が自然と滲み出ているもので、生々しくもぬくもりを感じるものです。

手書きの手紙は、活字以上に心の動きが1通の手紙からあふれています。私はそんな手紙のページが好きです。

手紙のページだけ、全然違うものが入り込んでいるようで引き込まれます。私は「文字」は人柄が出るものと思っていましたが、先代は「字とは、人生そのものである」とポッポちゃんに伝えています。

まとめ

小川糸さんの小説の登場人物はニックネームがついていることが多い。この「ツバキ文具店」も、主な登場人物にはニックネームがついています。ユニークでかわいいネーミングだと思います。

小川糸さんの公式ホームページ、糸通信の中に著者が書いている「あとがき」があります。

『ツバキ文具店』は、わたしから読者のみなさんへの、長い長い手紙です。
物語の中に登場するお店や食べ物は、実際に鎌倉に存在するので、ガイドブックのように、鎌倉という町そのものの魅力を楽しんでいただけたら、うれしいです。
そしてもし、本を読み終わってから、誰かに手紙を書いてみたくなったら、ぜひ自分の字で、相手に気持ちを届けてください。

糸通信 あとがき より

私は鎌倉には、1度だけ行ったことがあります。歴史があり、趣のある地で、いつかまた行きたいところだと思っていましたが、「ツバキ文具店」を読んで、心から行きたい、街の人と触れ合ってみたくなりました。

そして、今、お手紙を書きたいと思っています。
まずは、このレビューを読んでくださっているあなたにお手紙のつもりで書きました。


もし、お返事を出してみようと思ったら、ツイッターでメッセージくださいね。